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20世紀までは野球選手は打率・打点・本塁打で評価されてきましたが、現代では真の貢献度を数値化するセイバーメトリクスで選手を評価することが主流となっています。その中でも「OPS（出塁率＋長打率）」は、得点との関係性が高い重要指標です。
皆様の中には、
- セイバーメトリクスってそもそも何？
- OPSについて知りたい！
- 村上宗隆が記録したOPSってどれくらい？
という疑問や悩みを抱えている方はいらっしゃるはず。
そこでこの記事では、セイバーメトリクスの基本的な知識から、OPSの意味と計算方法、そして村上宗隆のOPS・OPS+まで網羅して紹介します。
この記事で紹介するセイバーメトリクスがMLBの「常識」になったのかを歴史と実例で語れる人は多くありません。私が入門書として読んだのが、実話をもとに書かれた「マネーボール」です。「マネーボール」はAudibleで音声でも聴けるのでぜひ次の画像をタップしてみてください。
セイバーメトリクスの概要
セイバーメトリクスは、野球の成績を統計学的に分析し、選手の真の価値を数値で可視化する手法です。従来の常識を覆し、OPSなど新たな評価指標を生み出しました。
- セイバーメトリクスと歴史
- セイバーメトリクスの指標
- セイバーメトリクスを普及させた実話「マネーボール」
セイバーメトリクスと歴史
セイバーメトリクスは、1970年代にアメリカの野球史研究家ビル・ジェームズによって提唱されました。名称は「Society for American Baseball Research（SABR）」と「metrics（測定）」を組み合わせた造語です。
当時は、打率や打点が選手の価値を決める主な指標でしたが、ジェームズは「出塁することこそが得点につながる」と主張し、出塁率や長打率を重視する分析を導入しました。1977年に発表した「Baseball Abstract」シリーズは、従来の野球観に一石を投じました。
ジェームズの研究は、バントや盗塁が必ずしも得点に結びつかないことを統計的に示し、戦術の再考を促しました。例えば、あるチームが送りバントを20回試みた場合、得点効率は約10％低下するといったデータが発表されています。
ジェームズの考え方は当初こそ批判を受けましたが、後に多くの球団が彼の分析を参考にし、現代野球の根幹を成す理論となりました。数字によって感覚や経験に頼らない戦略を生み出した点で、セイバーメトリクスは野球を「データのスポーツ」へと進化させたと言えるでしょう。
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セイバーメトリクスの指標
セイバーメトリクスでは、選手の貢献度をより正確に表すために多くの得点との相関がある指標が考案されています。
相関を表す相関係数とは、2つの数値データの関係の強さと方向を表す指標です。相関係数は－1.00から＋1.00の範囲で示され、＋1.00に近いほど強い正の関係を意味します。
セイバーメトリクスで代表的なものがOPS（出塁率＋長打率）です。OPSは得点との相関が非常に高く、NPBでは2008〜2017年の10年間で相関係数0.92という高い一致率を示しています。
出塁率（OBP）は「(安打＋四球＋死球) ÷ (打数＋四球＋死球＋犠飛)」で計算され、長打率（SLG）は「塁打数 ÷ 打数」で求められます。出塁率（OBP）と長打率（SLG）を足したOPSは、計算が単純でありながらも選手の得点能力を評価できる重要な指標です。
また、OPSをリーグ平均100として指数化したOPS+は、異なる時代や球場間でも比較できる便利な数値です。OPS+が150なら、平均的な打者よりも50％高い得点力を持つことを意味します。
その他にも、出塁率を重視したwOBA（加重出塁率）や、打撃・守備・走塁を統合的に評価するWAR（Wins Above Replacement）などが存在します。
セイバーメトリクスの指標によって、従来評価されにくかった「出塁率などの地味な貢献」も数値化され、例えば打率は低いけれど出塁率が高いカイル・シュワーバーなどの選手が正当に評価され出しています。
ここまでWARやセイバーメトリクスを解説してきましたが、
「結局、セイバーメトリクスってどう広まったの？」
と聞かれてスパッと答えられる人は少ないと思います。
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セイバーメトリクスを普及させた実話「マネーボール」
上の動画は実話をもとに公開された映画「マネーボール」の予告編です。
セイバーメトリクスが広く知られるようになったきっかけが、2000年代初頭のオークランド・アスレチックスによる「マネーボール革命」です。
年俸総額が30球団中28位と資金力の乏しいアスレチックスのゼネラルマネージャー、ビリー・ビーンは、年俸の高いスター選手を獲得できない状況下で、セイバーメトリクスを用いた戦略に活路を見出しました。
ビリー・ビーンは出塁率やOPSやWARなどセイバーメトリクスの指標が良いにもかかわらず、見た目や評価の低さから市場価値が安い選手を集め、チームを再建。
2002年シーズンには、当時アメリカンリーグ新記録の20連勝を達成し、さらにシーズン103勝を挙げて地区優勝に導きました。
この実話をもとに2011年に公開された映画「マネーボール」は、ブラッド・ピット主演で大ヒットを記録し、セイバーメトリクスの有効性を世に知らしめました。
劇中では「選手を顔やフォームではなく数字で見ろ」というセリフが印象的に語られています。アスレチックスの成功は、その後のMLB各球団の編成方針を変え、データ分析専門部署の設立を促しました。
現在では、セイバーメトリクスの考え方がスカウティングや契約交渉にも浸透しており、野球界に与えた「マネーボール」の影響は凄まじいものがあります。
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OPSの概要
OPSは、打者の「出塁力」と「長打力」をひとつの数値で表す指標です。ここでは具体的に以下の4点について解説します。
- OPSとは？
- OPSの計算式
- OPSの評価基準
- OPSを進化させたOPS+とは？
OPSとは？
OPSとは「On-base Plus Slugging（オンベース・プラス・スラッギング）」の略で、出塁率（OBP）と長打率（SLG）を足した値を指します。
出塁率は「アウトにならない確率」を表す指標であり、長打率は「どれだけ効率的に塁を進めたか」を表します。そのため、出塁率と長打率を合計すれば、打者の能力を総合して評価することが可能です。
例えば、出塁率が.400、長打率が.500の打者なら、OPSは.900となります。一般的に.900以上はリーグ屈指の強打者、.700前後が平均的な水準です。
OPSは1980年代にセイバーメトリクスの提唱者ビル・ジェームズが開発した指標で、得点との相関係数が非常に高いことが特徴です。2008年から2017年のNPBにおけるチーム得点との相関は決定係数0.92とされ、OPSの高低だけで9割以上の得点差を説明できると言われます。
つまり、OPSが高いほど得点を生み出す打者ということです。近年ではMLBやNPB公式サイトでも主要成績として掲載され、OPSは「打率・本塁打・打点」に次ぐ「第四の指標」として定着しています。
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OPSの計算式
OPSは、出塁率（OBP）＋長打率（SLG）で求められます。
まず出塁率は「(安打＋四球＋死球) ÷ (打数＋四球＋死球＋犠飛)」という計算式で、打者がどれだけアウトを避けて塁に出たかを示します。一方、長打率は「塁打数 ÷ 打数」で、単打を1、二塁打を2、三塁打を3、本塁打を4として計算されます。
例えば、出塁率が.380で長打率が.520の場合、OPSは.900になります。出塁率の最大値は1.000、長打率の最大値は4.000のため、理論上OPSの最大値は5.000です。実際には1.000を超える選手はMVP級とされ、大谷翔平がアジア人で初めて1.000を超えました。MLBの歴代最高はバリー・ボンズが記録した1.422（2004年）です。
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OPSの評価基準
セイバーメトリクスの創始者ビル・ジェームズは、OPSをAからGまでの7段階に分類しました。具体的には、Aランクが.900以上で「素晴らしい」、Bランクが.833〜.899で「非常に良い」、Cランクが.767〜.833で「良い」とされています。Dランク（.700〜.766）が「平均的」、Eランク（.633〜.699）は「平均以下」、Fランク（.567〜.633）は「悪い」、Gランク（.566以下）は「非常に悪い」と評価されます。
| ランク | 評価 | OPSの範囲 |
|---|---|---|
| A | 素晴らしい （MVP級） | .900以上 |
| B | 非常に良い | .833〜.899 |
| C | 良い | .767〜.833 |
| D | 並 | .700〜.766 |
| E | 平均以下 | .633〜.699 |
| F | 悪い | .567〜.633 |
| G | 非常に悪い | .566以下 |
実際のMLB全体平均OPSは、2023年シーズンで.734でした。OPSが.800を超える打者はチームの主軸級、.900を超えればMVP級といえます。
なお、OPSにはリーグや球場の環境差を考慮できないという弱点があるため、より公平な比較をするには後述のOPS+（平均を100とした補正値）を用います。
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OPSを進化させたOPS+とは？
PS+（オーピーエス・プラス）は、OPSをさらに進化させた「補正付き打撃指標」です。単純な出塁率と長打率の和であるOPSに、リーグ平均と球場の環境差（パークファクター）を加味して、より公平に打者の実力を比較できるようにした指標です。
計算式は「OPS+ ＝ 100 ×（出塁率 ÷ リーグ出塁率 ＋ 長打率 ÷ リーグ長打率 − 1）」で表され、リーグ平均を100とした指数で算出されます。
例えば、OPS+が150なら、平均的な打者よりも50％高い得点力を持つことを意味します。逆に80であれば、平均より20％低いという評価になります。
打者有利なヤンキースタジアムと広い球場であるオークランドの成績を同列に扱えないため、OPS+ではその環境差を補正してくれます。OPS+は、MLBではベーブ・ルースが通算206で史上最高、現役選手ではアーロン・ジャッジが約175、大谷翔平が160近くを毎年記録しています。
ここまでOPSなどセイバーメトリクスを見てきましたが、実はセイバーメトリクスの起源は20年以上前にあります。
2002年、MLBアスレチックスは年俸総額30球団中28位という“貧乏球団”でした。ところがセイバーメトリクスを導入した結果、103勝・リーグ記録の20連勝を達成します。
この実話を描いたブラッド・ピット主演映画『マネーボール』は、データが野球を変えたことがわかる名作です。
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村上宗隆の経歴やOPS、OPS+など通算成績
ここでは村上宗隆の日本でのOPSやOPS+について以下の順に解説します。
- 村上宗隆の経歴
- 村上宗隆の日本での打率・打点・本塁打・出塁率・OPSの推移
- 村上宗隆の日本でのOPS+の推移
村上宗隆の経歴
村上宗隆は2018年にヤクルトへ入団し、プロ1年目から長打力の片鱗を見せました。2019年には36本塁打・96打点を記録し、OPS.814と早くも中軸打者として存在感を発揮します。
2020年は打率.307、出塁率.427、OPS1.012で初の1.000超え。翌2021年はOPS.974を維持し、39本塁打・112打点でリーグ優勝に貢献しました。
2022年は打率.318、出塁率.458、OPS1.168で史上最年少三冠王。OPS1.168は近年のNPB打者でも最高水準で、出塁力と長打力が高次元で融合した結果です。
2023年は調整に苦しみながらもOPS.875、2024年はOPS.851、そして2025年にはOPS1.043と再び上昇し、通算では打率.270、出塁率.394、OPS.951を誇り、NPB全体でも屈指の高水準です。
村上宗隆は選球眼が極めて優れ、四球率が高く、出塁と長打をあわせ持つ打者です。打撃フォームは下半身主導で、コンパクトながら強いスイングを可能にしています。
三塁手としては守備範囲が広くはないものの、打撃でチームの勝敗を左右する存在です。OPSの推移は、村上宗隆が「打撃効率で勝つ」現代型スラッガーであることを明確に示しています。
そんな村上宗隆がMLB挑戦するほど、今や人種の壁はないメジャーリーグ。しかし、80年前、その礎を築いたのがジャッキー・ロビンソンでした。
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村上宗隆の日本での打率・打点・本塁打・出塁率・OPSの推移
村上宗隆は2018年にヤクルトへ入団し、19歳でプロ初本塁打を放ちました。2019年には143試合に出場し、打率.231、36本塁打、96打点、OPS.814を記録。若手スラッガーとして一気に頭角を現しました。
そんな村上宗隆の日本での打率・打点・本塁打・出塁率・OPSの推移を次の表にまとめました。
| 年度 | 球団 | 打率 | 打点 | 本塁打 | 出塁率 | OPS |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2018 | ヤクルト | .083 | 2 | 1 | .214 | .548 |
| 2019 | ヤクルト | .231 | 96 | 36 | .332 | .814 |
| 2020 | ヤクルト | .307 | 86 | 28 | .427 | 1.012 |
| 2021 | ヤクルト | .278 | 112 | 39 | .408 | .974 |
| 2022 | ヤクルト | .318 | 134 | 56 | .458 | 1.168 |
| 2023 | ヤクルト | .256 | 84 | 31 | .375 | .875 |
| 2024 | ヤクルト | .244 | 86 | 33 | .379 | .851 |
| 2025 | ヤクルト | .273 | 47 | 22 | .379 | 1.043 |
| 通算 | 8年 | .270 | 647 | 246 | .394 | .951 |
2020年は打率.307、出塁率.427、OPS1.012と大幅に成長し、リーグ屈指の打者へと進化しました。2021年には39本塁打・112打点を挙げ、OPS.974を記録し、中軸打者としてチームのリーグ優勝に大きく貢献しました。
2022年には打率.318、出塁率.458、OPS1.168をマークし、史上最年少で三冠王を獲得。打率・出塁・長打の三拍子が揃った打者に成長。2023年はやや調子を落としOPS.875、2024年はOPS.851と安定感を維持し、2025年はOPS1.043まで再上昇しています。
通算成績では打率.270、OPS.951、出塁率.394、長打率.557を誇り、数字の上でも日本球界を代表する打者です。左打席から広角に強い打球を放ち、出塁と長打の両立を高いレベルで実現している点が特徴です。
ここまでOPSやセイバーメトリクスを解説してきましたが、
「結局、セイバーメトリクスってどう広まったの？」
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村上宗隆の日本でのOPS+の推移
村上宗隆の日本でのOPS+の推移をリーグ平均成績と当ブログの算出したパークファクターをもとに概算し、次の表にまとめました。
| 年度 | 球団 | 出塁率 | 長打率 | OPS | OPS+ |
|---|---|---|---|---|---|
| 2018 | ヤクルト | .214 | .333 | .548 | 59 |
| 2019 | ヤクルト | .332 | .481 | .814 | 112 |
| 2020 | ヤクルト | .427 | .585 | 1.012 | 182 |
| 2021 | ヤクルト | .408 | .566 | .974 | 175 |
| 2022 | ヤクルト | .458 | .710 | 1.168 | 201 |
| 2023 | ヤクルト | .375 | .500 | .875 | 135 |
| 2024 | ヤクルト | .379 | .472 | .851 | 143 |
| 2025 | ヤクルト | .379 | .663 | 1.043 | 187 |
| 通算 | 8年 | .394 | .557 | .951 | 161 |
村上宗隆のOPS+の推移を見ると、リーグ平均を大きく上回るシーズンが続いています。OPS+はリーグ平均を100とした打撃指数で、村上宗隆は通算161を記録しています。これは平均打者の約1.6倍の打撃生産力を意味します。
2018年は出場機会が少なくOPS+59でしたが、2019年には112と平均を上回り、2020年には182、2021年には175、2022年には201とキャリアハイを更新しました。2023年は135、2024年は143とやや落ち着き、2025年には187まで回復しています。
特に2020〜2022年の3年間はOPS+180以上を記録し、完全にリーグトップクラスの打撃指標を維持しました。OPS+は出塁率と長打率をリーグ平均と球場補正で比較するため、単純なOPSよりも打者の純粋な価値を示します。
神宮球場は打者有利な環境とされますが、それを補正しても村上宗隆の数値は群を抜いています。強靭な体幹と安定したスイング軌道、投手の失投を逃さない反応速度が高いOPS+を支えています。
現代野球での評価はOPS+160を超える打者は稀であり、村上宗隆の成績はメジャーリーグでも中軸クラスに相当します。
日本球界においては、長嶋茂雄や王貞治に並ぶ「打撃効率の打者」とも呼べる存在です。
そんなOPS+などセイバーメトリクスを導入したのは、メジャーのオークランド・アスレチックスでした。2002年のアスレチックスの年俸総額は30球団中28位と弱小。しかしセイバーメトリクスの導入により、シーズン103勝、当時のリーグ記録20連勝を記録しました。
この実話を描いたブラッド・ピット主演映画『マネーボール』は、データが野球を変えたことがわかる名作です。
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「マネーボール」が普及させたセイバーメトリクスを知って野球を楽しもう【まとめ】
20世紀までの野球は「打率・打点・本塁打」で語られてきましたが、現代ではOPSやOPS+など、得点効率と貢献度を示す指標が主流になりました。
村上宗隆はセイバーメトリクスで見ると、出塁率と長打率を兼ね備えた理想的なスラッガーです。OPS1.168、OPS+200超えであり、チームを勝たせる打者と言えます。
そんな村上宗隆がMLB挑戦するほど、今や人種の壁はないメジャーリーグ。しかし、80年前、その礎を築いたのがジャッキー・ロビンソンでした。
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