メジャーリーグを語るうえで欠かせない指標のひとつが「WAR(Wins Above Replacement)」です。
WARは、ある選手が「控え選手と比べて何勝多くチームにもたらしたか」を数値化した総合評価で、打撃・守備・走塁すべてを含めて比較できる点が大きな特徴です。
皆様の中には、
- そもそもWARって何?
- ペドロ・マルティネスのWARを知りたい!
- ペドロ・マルティネスって正直どれくらい活躍してるの?
という疑問を抱えている方はいらっしゃるはず。
そこでこの記事では、WARの定義や当サイトのbsWARについて、メリットと限界を整理したうえで、ペドロ・マルティネスのシーズン別・通算成績を具体的に解説します。
WARとは何か?何を評価する指標か

WARは選手の総合的な貢献度を示す重要な評価指標です。ここでは以下の順に解説します。
- セイバーメトリクスとWARの関係性
- WAR(Wins Above Replacement)の定義と計算
- 当サイトのbsWARについて
- WARのメリット
セイバーメトリクスとWARの関係性
WARを正しく理解するには、まず「セイバーメトリクス」という言葉を知っておく必要があります。
セイバーメトリクスとは、野球を「勘や経験」ではなく「客観的なデータ(統計学)」で分析する手法のことです。
セイバーメトリクスによって「OPS」など様々な指標が生まれましたが、その中で「野手や投手を問わずに、選手の総合力をたった1つの数字で表そう」として作られた指標こそが、これから解説するWARです。
WAR(Wins Above Replacement)の定義
WARとは「Wins Above Replacement」の略称です。代替選手、つまり控えレベルの選手と比べてどれだけ勝利数を増やしたかを示します。
打撃、走塁、守備、投球などすべての要素を数値化し、統合して算出します。一般的に代替レベルのチームは勝率が約.320とされ、162試合で52勝程度しかできません。
基準と比較し、WARは選手がどれだけ勝利に貢献したかを数値化。打率や本塁打のように一側面だけではなく、総合的に選手の価値を評価できる点が特徴です。
当サイトのbsWARについて
WARには「これが公式」という単一の計算式がなく、算出元ごとに定義が異なります。当サイトでは、他サイトの数値を転載するのではなく、公開されている計数値からリーグ定数・パークファクターを含めて独自に算出した bsWAR を掲載しています。守備の材料にはMLB公式のOAAを用いています。計算式と検算の結果は算出方法の記事にまとめています。
WARのメリット
WARの最大のメリットは1つの数値で総合的な価値を比較できる点です。野手と投手を同じ基準で評価できるため、MVP投票や殿堂入り議論で活用されます。
また、WARは契約交渉や年俸評価でも重要な基準とされています。近年では「1WARは数百万ドルの価値」とも言われています。
ペドロ・マルティネスの年度別・通算WARを紹介
次の動画はペドロ・マルティネスの全盛期のハイライトです。
それではペドロ・マルティネスの年度別・通算WARなど成績を以下の順で解説します。
- ペドロ・マルティネスの経歴
- ペドロ・マルティネスの年度別のbsWAR
- 防御率・WHIP・奪三振率など通算成績
ペドロ・マルティネスの経歴
ペドロ・マルティネスは1971年にドミニカ共和国で生まれ、1992年にロサンゼルス・ドジャースでメジャーデビューしました。1994年からモントリオール・エクスポズで先発へ転向し、1997年には17勝8敗、防御率1.90、投手bsWAR 9.4を記録し、初のサイ・ヤング賞を受賞しました。
1997年オフにはボストン・レッドソックスへ移籍し、当時としては史上最高額となる6年総額7,500万ドルの大型契約を締結しました。レッドソックス移籍後、1999年に23勝4敗、防御率2.07、奪三振313、投手bsWAR 11.8と圧倒的な成績を残し、MVP級のパフォーマンスで再びサイ・ヤング賞を獲得しました。
2000年も防御率1.74、WHIP0.74、投手bsWAR 9.7という異次元の投球を見せ、歴代最高の投手と評されました。2004年には松井秀喜が所属していたニューヨーク・ヤンキースとのリーグ優勝決定戦に登板し、激闘の末にワールドシリーズへ進出。セントルイス・カージナルス戦では7回無失点の快投で優勝に貢献しました。
2005年にニューヨーク・メッツへ移籍し、年俸約1,300万ドルでプレー。最後はフィラデルフィア・フィリーズで現役を終え、通算219勝100敗、投手bsWAR 90.3を記録しました。
ペドロ・マルティネスの年度別のbsWAR
ペドロ・マルティネスの年度別のbsWAR(当サイト算出)は次の表の通りです。
| 年度 | 年齢 | チーム | 登板 | 投球回 | FIP | 投手bsWAR | 防御率 | 奪三振 | 与四球 | 被本塁打 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1992 | 21 | LA | 2 | 8.0 | 1.15 | 0.3 | 2.25 | 8 | 1 | 0 |
| 1993 | 22 | LA | 65 | 107.0 | 3.07 | 1.7 | 2.61 | 119 | 57 | 5 |
| 1994 | 23 | MON | 24 | 144.2 | 3.31 | 4.0 | 3.42 | 142 | 45 | 11 |
| 1995 | 24 | MON | 30 | 194.2 | 3.90 | 3.7 | 3.51 | 174 | 66 | 21 |
| 1996 | 25 | MON | 33 | 216.2 | 3.27 | 6.5 | 3.70 | 222 | 70 | 19 |
| 1997 | 26 | MON | 31 | 241.1 | 2.38 | 9.4 | 1.90 | 305 | 67 | 16 |
| 1998 | 27 | BOS | 33 | 233.2 | 3.40 | 5.9 | 2.89 | 251 | 67 | 26 |
| 1999 | 28 | BOS | 31 | 213.1 | 1.38 | 11.8 | 2.07 | 313 | 37 | 9 |
| 2000 | 29 | BOS | 29 | 217.0 | 2.16 | 9.7 | 1.74 | 284 | 32 | 17 |
| 2001 | 30 | BOS | 18 | 116.2 | 1.60 | 5.7 | 2.39 | 163 | 25 | 5 |
| 2002 | 31 | BOS | 30 | 199.1 | 2.23 | 7.7 | 2.26 | 239 | 40 | 13 |
| 2003 | 32 | BOS | 29 | 186.2 | 2.21 | 7.7 | 2.22 | 206 | 47 | 7 |
| 2004 | 33 | BOS | 33 | 217.0 | 3.57 | 5.4 | 3.90 | 227 | 61 | 26 |
| 2005 | 34 | NYM | 31 | 217.0 | 2.94 | 6.3 | 2.82 | 208 | 47 | 19 |
| 2006 | 35 | NYM | 23 | 132.2 | 4.04 | 2.3 | 4.48 | 137 | 39 | 19 |
| 2007 | 36 | NYM | 5 | 28.0 | 1.91 | 1.2 | 2.57 | 32 | 7 | 0 |
| 2008 | 37 | NYM | 20 | 109.0 | 5.17 | 0.4 | 5.62 | 87 | 44 | 19 |
| 2009 | 38 | PHI | 9 | 44.2 | 4.27 | 0.6 | 3.63 | 37 | 8 | 7 |
網掛けの指標(FIP・wOBA・wRAA・bsWAR)は、公開されている計数値からリーグ定数・パークファクターを含めて当サイトが独自に算出したものです。参考列は取得元の計数値そのものです。bsWAR は当サイト独自の WAR で、FanGraphs の fWAR・Baseball Reference の bWAR とは計算方法が異なります。出典:MLB Stats API(MLB Advanced Media, L.P.)/ Baseball Savant / NPB 公式サイト。 最終更新:2026年9月5日 5:16
ペドロ・マルティネスの年度別WARを見ると、その成績は常に安定しながらも1999年と2000年に頂点を迎えました。
1993年から1995年にかけて着実に成長を遂げ、1997年には投手bsWAR 9.4まで数値を伸ばしました。1999年には自己最高の11.8を記録し、史上でもトップクラスのシーズンを残しました。
2000年も9.7で、この2年だけで21.5という驚異的な貢献度を誇ります。2002年から2003年にかけてもそれぞれ7.7を維持し、投手としての安定感は他を圧倒しました。
2005年にはニューヨーク・メッツで投手bsWAR 6.3を記録し、球速低下後も抜群の制球と変化球で高い指標を維持しています。2009年、フィラデルフィア・フィリーズ時代には松井秀喜が所属するヤンキースとワールドシリーズで対戦し、第2戦に先発。被本塁打を浴びたものの、強打者を相手に戦う姿勢は健在でした。
通算90.3という数値は、MLB投手史の中でも10傑に入るレベルです。
ペドロ・マルティネスの防御率・WHIP・奪三振率など通算成績
ペドロ・マルティネスの防御率・WHIP・奪三振率など通算成績は次の通りです。
| 項目 | 通算 |
|---|---|
| 登板 | 476 |
| 投球回 | 2827.1 |
| 勝利 | 219 |
| 敗戦 | 100 |
| 奪三振 | 3,154 |
| 与四球 | 760 |
| 被本塁打 | 239 |
| 防御率 | 2.93 |
| WHIP | 1.054 |
網掛けの指標(FIP・wOBA・wRAA・bsWAR)は、公開されている計数値からリーグ定数・パークファクターを含めて当サイトが独自に算出したものです。参考列は取得元の計数値そのものです。bsWAR は当サイト独自の WAR で、FanGraphs の fWAR・Baseball Reference の bWAR とは計算方法が異なります。出典:MLB Stats API(MLB Advanced Media, L.P.)/ Baseball Savant / NPB 公式サイト。 最終更新:2026年9月5日 5:16
ペドロ・マルティネスの通算成績は、防御率2.93、WHIP1.05、奪三振3,154、K/9=10.0という驚異的な数値を誇ります。通算与四球760、BB/9=2.42と制球力も抜群で、K/BB比4.15は歴代屈指の精度を示します。さらに、通算被本塁打239、HR/9=0.76と長打をほとんど許さない投球内容でした。
ERA+は154で、平均的なMLB投手の1.5倍以上の失点を防ぐ能力を誇ります。特筆すべきは2000年のシーズンWHIP0.74という史上最高記録で、この年の防御率1.74も「ステロイド時代」において異常値と評されました。
通算219勝100敗という勝率.687は、クレイトン・カーショウと並ぶ歴代最高水準であり、安定した支配力の証です。投球スタイルは150km台の速球と切れ味鋭いチェンジアップを中心とし、打者のタイミングを完全に崩す頭脳的なピッチングを展開しました。
WARへの批判的な見方
WARは総合的な評価指標として広く利用されていますが、決して万能ではありません。WARには算出元ごとに複数の流儀があり、同じ選手でも数値が異なることから「どれを信じるべきか」と疑問を持つ声も多い事実があります。ここでは以下の順でWARへの批判や限界を整理します。
- WARの限界
- 「WARは出場機会で増える」「見かけ倒しでは?」との批判
WARの限界
WARは便利な指標ですが、限界も明確で、算出元によって守備評価の基準が異なるため、同じ選手でも数値が一致しません。
守備をUZRで測るかDRSで測るか(当サイトのbsWARはMLB公式のOAA)で、同じプレーの評価は変わります。また、投手をFIPで評価するか実際の失点で評価するかでも数値に差が出ます(bsWARはFIPベース)。
さらに、WARは環境要因やチーム状況を完全に反映できません。球場の広さや守備陣のレベルが選手の数値に影響するため、単純に比較することには限界があると言えるでしょう。
「WARは出場機会で増える」「見かけ倒しでは?」との批判
WARは積算型の指標なので、出場機会が多いほど数値が増えやすい特徴があります。そのため「レギュラーで出続ける選手はWARが高くなるが、本当に実力差を反映しているのか」という批判もあります。
例えば、シーズンを通して安定して出場する選手は、突出した打撃成績がなくてもWARを積み上げることが可能です。そのため「見かけ倒し」と捉えられることがあります。
さらに、短期間で圧倒的な成績を残す選手よりも、平均的な活躍を続けた選手が高く評価されるケースもあります。
こうした点から、WARは選手評価の一助にはなるものの、万能な指標ではなく、OPSや防御率など他のデータと併用してこそ、正確な選手の評価につながると言えるでしょう。
ペドロ・マルティネスの活躍したMLBを観てみよう【まとめ】
ペドロ・マルティネスは、打高投低のステロイド時代においても支配的な成績を残した歴史的名投手です。
通算の投手bsWAR 90.3、通算防御率2.93、WHIP1.05、奪三振率10.0という数値は、まさに近代野球の頂点を示しています。
