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メジャーリーグを語るうえで欠かせない指標のひとつが「WAR(Wins Above Replacement)」です。
WARは、ある選手が「控え選手と比べて何勝多くチームにもたらしたか」を数値化した総合評価で、打撃・守備・走塁すべてを含めて比較できる点が大きな特徴です。
皆様の中には、
- そもそもWARって何?
- デビッド・オルティーズのWARを知りたい!
- デビッド・オルティーズって正直どれくらい活躍してるの?
という疑問を抱えている方はいらっしゃるはず。
そこでこの記事では、WARの定義やfWARとrWARの違い、メリットと限界を整理したうえでデビッド・オルティーズのシーズン別・通算成績を具体的に解説します。
またこの記事で紹介するWARといった「野球の評価基準」をもっと深く知りたい方にとって、データ野球の原点を描いたノンフィクション小説『マネーボール』は、まさに必読のバイブルです。「データ重視の改革派vsスカウトの目重視の従来派」の確執まで詳細に描かれており、野球の見方が根本から変わる一冊です。
WARとは何か?何を評価する指標か

WARは選手の総合的な貢献度を示す重要な評価指標です。ここでは以下の順に解説します。
- セイバーメトリクスとWARの関係性
- WAR(Wins Above Replacement)の定義と計算
- fWARとrWARの違い
- WARのメリット
セイバーメトリクスとWARの関係性
WARを正しく理解するには、まず「セイバーメトリクス」という言葉を知っておく必要があります。
セイバーメトリクスとは、野球を「勘や経験」ではなく「客観的なデータ(統計学)」で分析する手法のことです。
セイバーメトリクスによって「OPS」など様々な指標が生まれましたが、その中で「野手や投手を問わずに、選手の総合力をたった1つの数字で表そう」として作られた指標こそが、これから解説するWARです。
WAR(Wins Above Replacement)の定義
WARとは「Wins Above Replacement」の略称です。代替選手、つまり控えレベルの選手と比べてどれだけ勝利数を増やしたかを示します。
打撃、走塁、守備、投球などすべての要素を数値化し、統合して算出します。一般的に代替レベルのチームは勝率が約.320とされ、162試合で52勝程度しかできません。
基準と比較し、WARは選手がどれだけ勝利に貢献したかを数値化。打率や本塁打のように一側面だけではなく、総合的に選手の価値を評価できる点が特徴です。
fWARとrWARの違い
WARには主にfWARとrWARの二種類があります。
fWARは野手の守備をUZRで評価し、投手はFIPをベースに算出する方法です。fWARは守備の影響を取り除けるため、理論的に投手の純粋な力を測れる指標です。
一方、rWARはBaseball Referenceで用いられる算出方法です。守備はDRSを使用し、投手は実際の失点ベースで評価する点が異なります。rWARは実際の試合結果に基づいた評価で、現実に近い数字を出すと言えます。
WARのメリット
WARの最大のメリットは1つの数値で総合的な価値を比較できる点です。野手と投手を同じ基準で評価できるため、MVP投票や殿堂入り議論で活用されます。
また、WARは契約交渉や年俸評価でも重要な基準とされています。近年では「1WARは数百万ドルの価値」とも言われています。
ここまでWARの定義などの難しい話をしましたが「専門用語ばかりでイメージしにくい…」と感じた方もいるかもしれません。
実は、セイバーメトリクスを理解するのに、いきなり数式を覚える必要はありません。まずはデータ野球の原点で、メジャーリーグを舞台にしたノンフィクション作品『マネーボール』に触れてみるのがおすすめです。
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次の動画はデビッド・オルティーズのホームラン集です。
デビッド・オルティーズはキャリアハイのシーズンを含め通算成績でも素晴らしい記録を残しています。ここでは以下の順に解説します。
- デビッド・オルティーズの経歴・契約・年俸
- デビッド・オルティーズの年度別のWAR
- デビッド・オルティーズの通算の打撃成績
デビッド・オルティーズの経歴・契約・年俸
ドミニカ共和国出身のオルティーズは1992年に17歳でプロ入り。ツインズを経て2003年にレッドソックスへ移籍すると才能を一気に開花させました。具体的に次の表に主要なタイトルや偉業をまとめました。
| デビッド・オルティーズ 主なタイトル・表彰 | |
|---|---|
| 本塁打王 | 1回 (2006年:54本) |
| 打点王 | 3回 (2005, 2006, 2016年) ※引退年の獲得は史上稀 |
| シルバースラッガー賞 | 7回 (2004-2007, 2011, 2013, 2016年) ※指名打者部門で歴代最多 |
| エドガー・マルティネス賞 (最優秀DH賞) |
8回 (歴代最多) ※2003-2007で5年連続受賞 |
| ハンク・アーロン賞 | 2回 (2005, 2016年) |
| MVP選出 | リーグCS MVP (2004) ワールドシリーズ MVP (2013) |
| その他 | ロベルト・クレメンテ賞 (2011) アメリカ野球殿堂入り (2022) |
| 背番号「34」 | ボストン・レッドソックス 永久欠番 (2017年制定) |
レッドソックス移籍1年目から打率.288、31本塁打を記録し、その後もチームを3度のワールドシリーズ制覇へ導いています。
契約規模も実績と共に拡大し、2006年には4年総額5200万ドル、2012年には2年総額2600万ドルで契約を延長しました。当時の指名打者としては破格の待遇であり、オルティーズの打棒がいかに高く評価されていたかが分かります。
2016年の現役最終年にも打点王を獲得するなど衰え知らずのまま引退し、2022年には得票率77.9%で野球殿堂入りを果たしました。通算541本塁打を放った彼の背番号34は、現在もフェンウェイ・パークの永久欠番となっています。
そんなスター選手であったオルティーズですが、実はこうしたデータ野球は、スター選手を獲れない貧乏球団の苦肉の策から始まりました。
「現在の華やかなデータ野球は、どこから始まったのか?」 その熱い歴史を知りたい方は、ノンフィクション映画『マネーボール』を見てみてください。
デビッド・オルティーズの年度別のWAR
年度別のfWARとrWARは以下の通りです。守備を行わないDHは数値が伸びにくい傾向にありますが、デビッド・オルティーズは打撃だけで驚異的な数値を積み上げました。
| シーズン | fWAR (FanGraphs) |
rWAR (Baseball-Ref) |
|---|---|---|
| 1997 | 0.2 | 0.1 |
| 1998 | 0.4 | 0.7 |
| 1999 | -0.5 | -0.6 |
| 2000 | 0.7 | 0.7 |
| 2001 | 0.3 | 0.3 |
| 2002 | 1.1 | 1.3 |
| 2003 | 3.2 | 3.4 |
| 2004 | 4.2 | 4.3 |
| 2005 | 5.3 | 5.2 |
| 2006 | 5.3 | 5.8 |
| 2007 | 6.3 | 6.4 |
| 2008 | 1.7 | 1.7 |
| 2009 | 0.3 | 0.7 |
| 2010 | 2.5 | 2.8 |
| 2011 | 3.7 | 4.0 |
| 2012 | 3.1 | 3.2 |
| 2013 | 3.4 | 4.4 |
| 2014 | 2.2 | 2.6 |
| 2015 | 2.9 | 3.0 |
| 2016 | 4.6 | 5.1 |
| 通算 (Total) | 51.0 | 55.0 |
FanGraphsによる通算fWARは51.0、Baseball-ReferenceのrWARは55.0を記録しています。特に全盛期の2007年にはfWARが6.3に達し、守備につかない打者がMVP級の働きをしていたことがわかります。
特筆すべきは引退年である2016年の異常な数値です。40歳という年齢ながらfWAR4.6、rWAR5.1を叩き出しており、これは通常の加齢曲線では考えられない成績と言えます。
ここまで紹介したWARといった指標は、試合中に「今のプレーでどれくらいWARを稼いだのだろう?」と手元のデータと照らし合わせると観戦の深みが変わります。ただ、スマホでは画面が手狭です。
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デビッド・オルティーズの通算の打撃成績
デビッド・オルティーズの通算の打撃成績は以下の通りです。通算打撃成績を確認すると、オルティーズが「史上最強の指名打者」と呼ばれる理由がよく分かります。メジャー20年間で積み上げた通算本塁打は541本、通算打点は1768点に及び、歴代でも屈指の数字を残しました。
| 年度 | 打率 | 打点 | 本塁打 | 出塁率 | OPS |
|---|---|---|---|---|---|
| 1997 | .327 | 19 | 1 | .353 | .802 |
| 1998 | .277 | 46 | 9 | .371 | .817 |
| 1999 | .000 | 0 | 0 | .200 | .200 |
| 2000 | .282 | 63 | 10 | .364 | .810 |
| 2001 | .234 | 48 | 18 | .324 | .799 |
| 2002 | .272 | 75 | 20 | .339 | .839 |
| 2003 | .288 | 101 | 31 | .369 | .961 |
| 2004 | .301 | 139 | 41 | .380 | .983 |
| 2005 | .300 | 148 | 47 | .397 | 1.001 |
| 2006 | .287 | 137 | 54 | .413 | 1.049 |
| 2007 | .332 | 117 | 35 | .445 | 1.066 |
| 2008 | .264 | 89 | 23 | .369 | .877 |
| 2009 | .238 | 99 | 28 | .332 | .794 |
| 2010 | .270 | 102 | 32 | .370 | .899 |
| 2011 | .309 | 96 | 29 | .398 | .953 |
| 2012 | .318 | 60 | 23 | .415 | 1.026 |
| 2013 | .309 | 103 | 30 | .395 | .959 |
| 2014 | .263 | 104 | 35 | .355 | .873 |
| 2015 | .273 | 108 | 37 | .360 | .913 |
| 2016 | .315 | 127 | 38 | .401 | 1.021 |
| 通算 | .286 | 1768 | 541 | .380 | .931 |
特に長打力と選球眼を兼ね備えており、通算OPSは.931という極めて高い水準を誇ります。シーズン54本塁打を記録して本塁打王と打点王の二冠に輝いた2006年は、キャリアハイと言えるでしょう。
勝負強さも驚異的であり、2013年のワールドシリーズでは打率.688、OPS1.948という異次元の成績を残し、自身3度目の世界一に貢献しました。
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WARへの批判的な見方
WARは総合的な評価指標として広く利用されていますが、決して万能ではありません。fWARやrWARの算出方法には違いがあり、同じ選手でも数値が異なることから「どちらを信じるべきか」と疑問を持つ声も多い事実があります。ここでは以下の順でWARへの批判や限界を整理します。
- WARの限界
- 「WARは出場機会で増える」「見かけ倒しでは?」との批判
WARの限界
WARは便利な指標ですが、限界も明確で、まずfWARとrWARで守備評価の基準が異なるため、選手の数値が一致しません。
UZRを使うfWARと、DRSを用いるrWARでは同じプレーを評価しても結果が変わります。また、投手の評価方法にも違いがあり、FIPを採用するfWARと実際の失点を考慮するrWARでは数値に差が出ます。
さらに、WARは環境要因やチーム状況を完全に反映できません。球場の広さや守備陣のレベルが選手の数値に影響するため、単純に比較することには限界があると言えるでしょう。
「WARは出場機会で増える」「見かけ倒しでは?」との批判
WARは積算型の指標なので、出場機会が多いほど数値が増えやすい特徴があります。そのため「レギュラーで出続ける選手はWARが高くなるが、本当に実力差を反映しているのか」という批判もあります。
例えば、シーズンを通して安定して出場する選手は、突出した打撃成績がなくてもWARを積み上げることが可能です。そのため「見かけ倒し」と捉えられることがあります。
さらに、短期間で圧倒的な成績を残す選手よりも、平均的な活躍を続けた選手が高く評価されるケースもあります。
こうした点から、WARは選手評価の一助にはなるものの、万能な指標ではなく、OPSや防御率など他のデータと併用してこそ、正確な選手の評価につながると言えるでしょう。
デビッド・オルティーズは殿堂入りするに違いない【まとめ】
デビッド・オルティーズが2022年に殿堂入りを果たしたのは、セイバーメトリクスの観点からも必然でした。守備を行わないDHでありながら、通算WAR50超えという数値は、オルティーズの打撃貢献がいかに傑出していたかがわかります。
こうしたWARなどの指標は、試合中に「今のプレーで数値がどう動いた?」と手元のデータと照らし合わせると観戦の深みが変わります。ただ、スマホでは画面が手狭です。
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