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メジャーリーグを語るうえで欠かせない指標のひとつが「WAR(Wins Above Replacement)」です。
WARは、ある選手が「控え選手と比べて何勝多くチームにもたらしたか」を数値化した総合評価で、打撃・守備・走塁すべてを含めて比較できる点が大きな特徴です。
皆様の中には、
- そもそもWARって何?
- ペドロ・マルティネスのWARを知りたい!
- ペドロ・マルティネスって正直どれくらい活躍してるの?
という疑問を抱えている方はいらっしゃるはず。
そこでこの記事では、WARの定義やfWARとrWARの違い、メリットと限界を整理したうえで、ペドロ・マルティネスのシーズン別・通算成績を具体的に解説します。
この記事で紹介するセイバーメトリクスがMLBの「常識」になったのかを歴史と実例で語れる人は多くありません。私が入門書として読んだのが、実話をもとに書かれた「マネーボール」です。「マネーボール」はAudibleで音声でも聴けるのでぜひ次の画像をタップしてみてください。
セイバーメトリクスの概要

セイバーメトリクスは、野球の成績を統計学的に分析し、選手の真の価値を数値で可視化する手法です。従来の常識を覆し、OPSなど新たな評価指標を生み出しました。
- セイバーメトリクスと歴史
- セイバーメトリクスの指標
- セイバーメトリクスを普及させた実話「マネーボール」
セイバーメトリクスと歴史
セイバーメトリクスは、1970年代にアメリカの野球史研究家ビル・ジェームズによって提唱されました。名称は「Society for American Baseball Research(SABR)」と「metrics(測定)」を組み合わせた造語です。
当時は、打率や打点が選手の価値を決める主な指標でしたが、ジェームズは「出塁することこそが得点につながる」と主張し、出塁率や長打率を重視する分析を導入しました。1977年に発表した「Baseball Abstract」シリーズは、従来の野球観に一石を投じました。
ジェームズの研究は、バントや盗塁が必ずしも得点に結びつかないことを統計的に示し、戦術の再考を促しました。例えば、あるチームが送りバントを20回試みた場合、得点効率は約10%低下するといったデータが発表されています。
ジェームズの考え方は当初こそ批判を受けましたが、後に多くの球団が彼の分析を参考にし、現代野球の根幹を成す理論となりました。数字によって感覚や経験に頼らない戦略を生み出した点で、セイバーメトリクスは野球を「データのスポーツ」へと進化させたと言えるでしょう。
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セイバーメトリクスの指標
セイバーメトリクスでは、選手の貢献度をより正確に表すために多くの得点との相関がある指標が考案されています。
相関を表す相関係数とは、2つの数値データの関係の強さと方向を表す指標です。相関係数は-1.00から+1.00の範囲で示され、+1.00に近いほど強い正の関係を意味します。
セイバーメトリクスで代表的なものがOPS(出塁率+長打率)です。OPSは得点との相関が非常に高く、NPBでは2008〜2017年の10年間で相関係数0.92という高い一致率を示しています。
出塁率(OBP)は「(安打+四球+死球) ÷ (打数+四球+死球+犠飛)」で計算され、長打率(SLG)は「塁打数 ÷ 打数」で求められます。出塁率(OBP)と長打率(SLG)を足したOPSは、計算が単純でありながらも選手の得点能力を評価できる重要な指標です。
また、OPSをリーグ平均100として指数化したOPS+は、異なる時代や球場間でも比較できる便利な数値です。OPS+が150なら、平均的な打者よりも50%高い得点力を持つことを意味します。
その他にも、出塁率を重視したwOBA(加重出塁率)や、打撃・守備・走塁を統合的に評価するWAR(Wins Above Replacement)などが存在します。
セイバーメトリクスの指標によって、従来評価されにくかった「出塁率などの地味な貢献」も数値化され、例えば打率は低いけれど出塁率が高いカイル・シュワーバーなどの選手が正当に評価され出しています。
ここまでWARやセイバーメトリクスを解説してきましたが、
「結局、セイバーメトリクスってどう広まったの?」
と聞かれてスパッと答えられる人は少ないと思います。
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セイバーメトリクスを普及させた実話「マネーボール」
上の動画は実話をもとに公開された映画「マネーボール」の予告編です。
セイバーメトリクスが広く知られるようになったきっかけが、2000年代初頭のオークランド・アスレチックスによる「マネーボール革命」です。
年俸総額が30球団中28位と資金力の乏しいアスレチックスのゼネラルマネージャー、ビリー・ビーンは、年俸の高いスター選手を獲得できない状況下で、セイバーメトリクスを用いた戦略に活路を見出しました。
ビリー・ビーンは出塁率やOPSやWARなどセイバーメトリクスの指標が良いにもかかわらず、見た目や評価の低さから市場価値が安い選手を集め、チームを再建。
2002年シーズンには、当時アメリカンリーグ新記録の20連勝を達成し、さらにシーズン103勝を挙げて地区優勝に導きました。
この実話をもとに2011年に公開された映画「マネーボール」は、ブラッド・ピット主演で大ヒットを記録し、セイバーメトリクスの有効性を世に知らしめました。
劇中では「選手を顔やフォームではなく数字で見ろ」というセリフが印象的に語られています。アスレチックスの成功は、その後のMLB各球団の編成方針を変え、データ分析専門部署の設立を促しました。
現在では、セイバーメトリクスの考え方がスカウティングや契約交渉にも浸透しており、野球界に与えた「マネーボール」の影響は凄まじいものがあります。
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WARとは何か?何を評価する指標か

WARは選手の総合的な貢献度を示す重要な評価指標です。ここでは以下の順に解説します。
- WAR(Wins Above Replacement)の定義と計算
- fWARとrWARの違い
- WARのメリット
WAR(Wins Above Replacement)の定義
WARとは「Wins Above Replacement」の略称です。代替選手、つまり控えレベルの選手と比べてどれだけ勝利数を増やしたかを示します。
打撃、走塁、守備、投球などすべての要素を数値化し、統合して算出します。一般的に代替レベルのチームは勝率が約.320とされ、162試合で52勝程度しかできません。
基準と比較し、WARは選手がどれだけ勝利に貢献したかを数値化。打率や本塁打のように一側面だけではなく、総合的に選手の価値を評価できる点が特徴です。
ここまでWARやセイバーメトリクスを見てきましたが、実はセイバーメトリクスの起源は20年以上前にあります。
2002年、MLBアスレチックスは年俸総額30球団中28位という“貧乏球団”でした。ところがセイバーメトリクスを導入した結果、103勝・リーグ記録の20連勝を達成します。
この実話を描いたブラッド・ピット主演映画『マネーボール』は、データが野球を変えたことがわかる名作です。
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fWARとrWARの違い
WARには主にfWARとrWARの二種類があります。
fWARは野手の守備をUZRで評価し、投手はFIPをベースに算出する方法です。fWARは守備の影響を取り除けるため、理論的に投手の純粋な力を測れる指標です。
一方、rWARはBaseball Referenceで用いられる算出方法です。守備はDRSを使用し、投手は実際の失点ベースで評価する点が異なります。rWARは実際の試合結果に基づいた評価で、現実に近い数字を出すと言えます。
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WARのメリット
WARの最大のメリットは1つの数値で総合的な価値を比較できる点です。野手と投手を同じ基準で評価できるため、MVP投票や殿堂入り議論で活用されます。
また、WARは契約交渉や年俸評価でも重要な基準とされています。近年では「1WARは数百万ドルの価値」とも言われています。
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WARへの批判的な見方
WARは総合的な評価指標として広く利用されていますが、決して万能ではありません。fWARやrWARの算出方法には違いがあり、同じ選手でも数値が異なることから「どちらを信じるべきか」と疑問を持つ声も多い事実があります。ここでは以下の順でWARへの批判や限界を整理します。
- WARの限界
- 「WARは出場機会で増える」「見かけ倒しでは?」との批判
WARの限界
WARは便利な指標ですが、限界も明確で、まずfWARとrWARで守備評価の基準が異なるため、選手の数値が一致しません。
UZRを使うfWARと、DRSを用いるrWARでは同じプレーを評価しても結果が変わります。また、投手の評価方法にも違いがあり、FIPを採用するfWARと実際の失点を考慮するrWARでは数値に差が出ます。
さらに、WARは環境要因やチーム状況を完全に反映できません。球場の広さや守備陣のレベルが選手の数値に影響するため、単純に比較することには限界があると言えるでしょう。
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「WARは出場機会で増える」「見かけ倒しでは?」との批判
WARは積算型の指標なので、出場機会が多いほど数値が増えやすい特徴があります。そのため「レギュラーで出続ける選手はWARが高くなるが、本当に実力差を反映しているのか」という批判もあります。
例えば、シーズンを通して安定して出場する選手は、突出した打撃成績がなくてもWARを積み上げることが可能です。そのため「見かけ倒し」と捉えられることがあります。
さらに、短期間で圧倒的な成績を残す選手よりも、平均的な活躍を続けた選手が高く評価されるケースもあります。
こうした点から、WARは選手評価の一助にはなるものの、万能な指標ではなく、OPSや防御率など他のデータと併用してこそ、正確な選手の評価につながると言えるでしょう。
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ペドロ・マルティネスの年度別・通算WARを紹介
次の動画はペドロ・マルティネスの全盛期のハイライトです。
それではペドロ・マルティネスの年度別・通算WARなど成績を以下の順で解説します。
- ペドロ・マルティネスの経歴
- ペドロ・マルティネスのシーズン別のfWARとrWAR
- 防御率・WHIP・奪三振率など通算成績
ペドロ・マルティネスの経歴
ペドロ・マルティネスは1971年にドミニカ共和国で生まれ、1992年にロサンゼルス・ドジャースでメジャーデビューしました。1994年からモントリオール・エクスポズで先発へ転向し、1997年には17勝8敗、防御率1.90、WAR8.5を記録し、初のサイ・ヤング賞を受賞しました。
1997年オフにはボストン・レッドソックスへ移籍し、当時としては史上最高額となる6年総額7,500万ドルの大型契約を締結しました。レッドソックス移籍後、1999年に23勝4敗、防御率2.07、奪三振313、WAR11.6と圧倒的な成績を残し、MVP級のパフォーマンスで再びサイ・ヤング賞を獲得しました。
2000年も防御率1.74、WHIP0.74、WAR9.4という異次元の投球を見せ、歴代最高の投手と評されました。2004年には松井秀喜が所属していたニューヨーク・ヤンキースとのリーグ優勝決定戦に登板し、激闘の末にワールドシリーズへ進出。セントルイス・カージナルス戦では7回無失点の快投で優勝に貢献しました。
2005年にニューヨーク・メッツへ移籍し、年俸約1,300万ドルでプレー。最後はフィラデルフィア・フィリーズで現役を終え、通算219勝100敗、WAR84.4を記録しました。
そんなドミニカ共和国出身のペドロ・マルティネスが殿堂入りするほど、今や人種の壁はないメジャーリーグ。しかし、80年前、その礎を築いたのがジャッキー・ロビンソンでした。
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ペドロ・マルティネスのシーズン別のfWARとrWAR
ペドロ・マルティネスのシーズン別のfWARとrWARは次の表にまとめました。
| シーズン | チーム | fWAR | rWAR |
|---|---|---|---|
| 1992 | LAD | 0.4 | 0.3 |
| 1993 | LAD | 1.7 | 3.0 |
| 1994 | MON | 3.4 | 2.4 |
| 1995 | MON | 3.0 | 4.7 |
| 1996 | MON | 5.1 | 4.0 |
| 1997 | MON | 8.5 | 9.0 |
| 1998 | BOS | 5.7 | 7.3 |
| 1999 | BOS | 11.6 | 9.8 |
| 2000 | BOS | 9.4 | 11.7 |
| 2001 | BOS | 5.5 | 5.1 |
| 2002 | BOS | 7.4 | 6.5 |
| 2003 | BOS | 7.4 | 8.0 |
| 2004 | BOS | 4.9 | 5.5 |
| 2005 | NYM | 6.1 | 7.0 |
| 2006 | NYM | 2.3 | 1.0 |
| 2007 | NYM | 1.2 | 0.6 |
| 2008 | NYM | 0.2 | -0.4 |
| 2009 | PHI | 0.5 | 0.7 |
| 通算 | — | 84.4 | 83.9 |
ペドロ・マルティネスの年度別WARを見ると、その成績は常に安定しながらも1999年と2000年に頂点を迎えました。
1993年のfWARは1.7、1994年は3.4、1995年は3.0と着実に成長を遂げ、1997年には8.5へと跳ね上がりました。1999年にはfWAR11.6、rWAR9.8を記録し、史上でもトップクラスのシーズンWARを残しました。
2000年もfWAR9.4、rWAR11.7で、わずか2年で約21という驚異的な貢献度を誇ります。2002年から2003年にかけてもそれぞれfWAR7.4、rWAR7前後を維持し、投手としての安定感は他を圧倒しました。
2005年にはニューヨーク・メッツでfWAR6.1を記録し、球速低下後も抜群の制球と変化球で高い指標を維持しています。2009年、フィラデルフィア・フィリーズ時代には松井秀喜が所属するヤンキースとワールドシリーズで対戦し、第2戦に先発。被本塁打を浴びたものの、強打者を相手に戦う姿勢は健在でした。
通算fWAR84.4、rWAR83.9という数値は、MLB投手史の中でも10傑に入るレベルです。
ここまでペドロ・マルティネスをWARで評価してきました。そんなWARなどのセイバーメトリクスの起源は20年以上前にあります。
2002年、MLBアスレチックスは年俸総額30球団中28位という“貧乏球団”でした。ところがセイバーメトリクスを導入した結果、103勝・リーグ記録の20連勝を達成します。
この実話を描いたブラッド・ピット主演映画『マネーボール』は、データが野球を変えたことがわかる名作です。
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ペドロ・マルティネスの防御率・WHIP・奪三振率など通算成績
ペドロ・マルティネスの防御率・WHIP・奪三振率など通算成績は次の通りです。
| 項目 | 数値 | 説明 |
|---|---|---|
| 登板試合数 | 476 | 先発409試合・救援67試合 |
| 勝敗 | 219勝100敗 | 勝率.687(歴代先発でトップ級) |
| 投球回 | 2,827.1回 | 20年にわたるMLB通算投球回 |
| 防御率(ERA) | 2.93 | 平均失点を防いだ実績値 |
| FIP | 2.91 | 本来の投球内容を反映した独立指標 |
| WHIP | 1.054 | 1イニングあたり出塁を許した打者数 |
| 奪三振 | 3,154 | 通算K率10.0(歴代屈指) |
| 与四球 | 760 | 通算BB率2.4、制球力の高さを示す |
| 被本塁打 | 239 | 被本塁打率0.76/9回 |
| 奪三振率(K/9) | 10.04 | 1試合あたり10奪三振の支配力 |
| 与四球率(BB/9) | 2.42 | 高い制球精度を維持 |
| 被本塁打率(HR/9) | 0.76 | 長打を許さない低被弾率 |
| 被打率(AVG) | .214 | 被打率2割前半を誇る |
| ERA+ | 154 | 平均投手の1.5倍以上の run prevention 能力 |
| WAR(fWAR) | 84.4 | Fangraphs基準の総合貢献度 |
| WAR(rWAR) | 83.9 | Baseball Reference基準のWAR |
ペドロ・マルティネスの通算成績は、防御率2.93、WHIP1.05、奪三振3,154、K/9=10.0という驚異的な数値を誇ります。通算与四球760、BB/9=2.42と制球力も抜群で、K/BB比4.15は歴代屈指の精度を示します。さらに、通算被本塁打239、HR/9=0.76と長打をほとんど許さない投球内容でした。
ERA+は154で、平均的なMLB投手の1.5倍以上のrun prevention能力を誇ります。特筆すべきは2000年のシーズンWHIP0.74という史上最高記録で、この年の防御率1.74も「ステロイド時代」において異常値と評されました。
通算219勝100敗という勝率.687は、クレイトン・カーショウと並ぶ歴代最高水準であり、安定した支配力の証です。投球スタイルは150km台の速球と切れ味鋭いチェンジアップを中心とし、打者のタイミングを完全に崩す頭脳的なピッチングを展開しました。
ここまでWARやセイバーメトリクスを解説してきましたが、
「ペドロ・マルティネスは何が具体的に凄いの?」
「結局、WARってどう広まったの?」
と聞かれてスパッと答えられる人は少ないと思います。
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以前はAudibleで『マネーボール』を単品で買うと約4,000円と高価でしたが、2022年から月額1,500円の聴き放題にリニューアルし、初回30日間は無料体験も可能となり、いつでも解約できるようになりました。
「本を最近読んでないな…」
「活字は嫌いだけど、YouTubeを聴き流したり、ニュースを聴き流したりしている!」
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ペドロ・マルティネスの活躍したMLBを観てみよう【まとめ】
ペドロ・マルティネスは、打高投低のステロイド時代においても支配的な成績を残した歴史的名投手です。
通算WAR84.4、通算防御率2.93、WHIP1.05、奪三振率10.0という数値は、まさに近代野球の頂点を示しています。
そんなドミニカ共和国出身のペドロ・マルティネスが殿堂入りするほど、今や人種の壁はないメジャーリーグ。しかし、80年前、その礎を築いたのがジャッキー・ロビンソンでした。
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