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メジャーリーグを語るうえで欠かせない指標のひとつが「WAR(Wins Above Replacement)」です。
WARは、ある選手が「控え選手と比べて何勝多くチームにもたらしたか」を数値化した総合評価で、打撃・守備・走塁すべてを含めて比較できる点が大きな特徴です。
皆様の中には、
- そもそもWARって何?
- バリー・ボンズのWARを知りたい!
- バリー・ボンズって正直どれくらい活躍してるの?
という疑問を抱えている方はいらっしゃるはず。
そこでこの記事では、WARの定義やfWARとrWARの違い、メリットと限界を整理したうえでバリー・ボンズのシーズン別・通算成績、薬物のステロイド疑惑から73本のホームランを打ったシーズンの成績まで具体的に解説します。
WARとは何か?何を評価する指標か

WARは選手の総合的な貢献度を示す重要な評価指標です。ここでは以下の順に解説します。
- セイバーメトリクスとWARの関係性
- WAR(Wins Above Replacement)の定義と計算
- fWARとrWARの違い
- WARのメリット
セイバーメトリクスとWARの関係性
WARを正しく理解するには、まず「セイバーメトリクス」という言葉を知っておく必要があります。
セイバーメトリクスとは、野球を「勘や経験」ではなく「客観的なデータ(統計学)」で分析する手法のことです。
セイバーメトリクスによって「OPS」など様々な指標が生まれましたが、その中で「野手や投手を問わずに、選手の総合力をたった1つの数字で表そう」として作られた指標こそが、これから解説するWARです。
WAR(Wins Above Replacement)の定義
WARとは「Wins Above Replacement」の略称です。代替選手、つまり控えレベルの選手と比べてどれだけ勝利数を増やしたかを示します。
打撃、走塁、守備、投球などすべての要素を数値化し、統合して算出します。一般的に代替レベルのチームは勝率が約.320とされ、162試合で52勝程度しかできません。
基準と比較し、WARは選手がどれだけ勝利に貢献したかを数値化。打率や本塁打のように一側面だけではなく、総合的に選手の価値を評価できる点が特徴です。
fWARとrWARの違い
WARには主にfWARとrWARの二種類があります。
fWARは野手の守備をUZRで評価し、投手はFIPをベースに算出する方法です。fWARは守備の影響を取り除けるため、理論的に投手の純粋な力を測れる指標です。
一方、rWARはBaseball Referenceで用いられる算出方法です。守備はDRSを使用し、投手は実際の失点ベースで評価する点が異なります。rWARは実際の試合結果に基づいた評価で、現実に近い数字を出すと言えます。
WARのメリット
WARの最大のメリットは1つの数値で総合的な価値を比較できる点です。野手と投手を同じ基準で評価できるため、MVP投票や殿堂入り議論で活用されます。
また、WARは契約交渉や年俸評価でも重要な基準とされています。近年では「1WARは数百万ドルの価値」とも言われています。
ここまでWARの定義などの難しい話をしましたが「専門用語ばかりでイメージしにくい…」と感じた方もいるかもしれません。
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バリー・ボンズの経歴や年度別・通算の成績
上の動画は軽々とホームランを打つバリー・ボンズの映像です。
バリー・ボンズはメジャー史上最も議論を呼ぶ打者です。驚異的なWARとOPSを誇りながら、薬物疑惑によって殿堂入りを逃しました。ここでは以下の順に解説します。
- バリー・ボンズの経歴
- バリー・ボンズの年度別のWAR
- バリー・ボンズの通算の打撃成績
バリー・ボンズの経歴
バリー・ボンズ(Barry Lamar Bonds)は1964年にカリフォルニア州で生まれました。父は元メジャーリーガーのボビー・ボンズで、祖父もプロ野球選手という三世代野球一家です。
1985年のドラフトでピッツバーグ・パイレーツにMLBドラフト1巡目(全体6位)で指名され、1986年にデビューしました。俊足強打の外野手として活躍し、1990年には打率.301、本塁打33本、打点114点、盗塁52という5ツール型の成績を残しました。
1993年にサンフランシスコ・ジャイアンツへ移籍すると、以降15年間チームの象徴として君臨します。1990年代後半にはOPS1.000超を連発し、2001年には本塁打73本を放ち歴代最多記録を更新しました。
通算成績は2,986試合で打率.298、安打2,935、出塁率.444、長打率.607、OPS1.051の怪物ぶり。rWARで162.8、fWARで164.4に達し、ベーブ・ルースに次ぐ歴代2位です。
守備ではレフトを中心に2,700試合以上に出場し、ゴールドグラブ賞8回を受賞しました。攻守両面で支配的だった選手ですが、同時に後述の薬物問題でも注目を浴びる存在となりました。
今やデータで見ると化け物であるバリー・ボンズですが、実はこうしたデータ野球は、スター選手を獲れない貧乏球団の苦肉の策から始まりました。
「現在の華やかなデータ野球は、どこから始まったのか?」 その熱い歴史を知りたい方は、ノンフィクション映画『マネーボール』を見てみてください。
バリー・ボンズのステロイド・薬物疑惑
ボンズは2000年代初頭、BALCO事件でステロイド使用疑惑の中心人物とされました。実際に起訴されたわけではありませんが、証言や検査記録から使用が強く疑われています。
2001年から2004年にかけての4年間は、OPSが毎年1.27を超え、出塁率は.582や.609と史上最高を記録しました。特に2004年は四球232、故意四球120と前人未到の数値を残しています。当時の肉体変化とパフォーマンス向上が薬物によるものではないかと議論され、野球界全体の倫理問題へと発展しました。
一方で、ボンズの選球眼とスイングスピード、打撃理論の精密さは数値化できない天賦の才能とも評されます。MLBは後に厳格なドーピング検査を導入し、ボンズの時代は「薬物時代」と呼ばれるようになりました。
2013年に現役引退後も殿堂入り投票では75%に届かず、2022年の最終年で得票率66%にとどまりました。薬物疑惑は彼の功績に影を落としましたが、記録の純粋な数値は依然として歴史上最高レベルに位置します。「才能と倫理の狭間に立った最強打者」として、ボンズの存在は今なお議論を呼び続けています。
バリー・ボンズの年度別のWAR
バリー・ボンズの年度別のfWARとrWARは以下の通りです。
| 年 | チーム | rWAR | fWAR |
|---|---|---|---|
| 1986 | PIT | 3.5 | 3.3 |
| 1987 | PIT | 5.8 | 5.5 |
| 1988 | PIT | 6.3 | 6.4 |
| 1989 | PIT | 8.0 | 7.9 |
| 1990 | PIT | 9.7 | 9.5 |
| 1991 | PIT | 8.0 | 7.8 |
| 1992 | PIT | 9.0 | 9.1 |
| 1993 | SF | 9.9 | 9.6 |
| 1994 | SF | 6.2 | 6.1 |
| 1995 | SF | 7.5 | 7.3 |
| 1996 | SF | 9.7 | 9.5 |
| 1997 | SF | 8.2 | 8.0 |
| 1998 | SF | 8.1 | 8.3 |
| 1999 | SF | 3.8 | 3.6 |
| 2000 | SF | 7.7 | 7.8 |
| 2001(73本塁打) | SF | 11.9 | 12.5 |
| 2002 | SF | 11.7 | 12.1 |
| 2003 | SF | 9.2 | 9.4 |
| 2004 | SF | 10.6 | 10.8 |
| 2005 | SF | 0.6 | 0.5 |
| 2006 | SF | 4.0 | 4.1 |
| 2007 | SF | 3.4 | 3.2 |
| 通算 | — | 162.8 | 164.4 |
全盛期の2001〜2004年は平均fWARが約11.0で、打撃だけでなく守備・走塁も含めて歴代最高水準です。1シーズンで10.0を超えるWARは「神の領域」と呼ばれ、ボンズはそれを4年連続で達成しました。ステロイド疑惑さえなければ間違いなく殿堂入りしている選手です。
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バリー・ボンズの通算の打撃成績
以下は主要打撃成績の年度別推移です。
| 年 | 打率 | 本塁打 | 打点 | 出塁率 | 長打率 | OPS |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1986 | 0.223 | 16 | 48 | 0.330 | 0.416 | 0.746 |
| 1987 | 0.261 | 25 | 59 | 0.329 | 0.492 | 0.821 |
| 1988 | 0.283 | 24 | 58 | 0.368 | 0.491 | 0.859 |
| 1989 | 0.248 | 19 | 58 | 0.351 | 0.426 | 0.777 |
| 1990 | 0.301 | 33 | 114 | 0.406 | 0.565 | 0.97 |
| 1991 | 0.292 | 25 | 116 | 0.410 | 0.514 | 0.924 |
| 1992 | 0.311 | 34 | 103 | 0.456 | 0.624 | 1.08 |
| 1993 | 0.336 | 46 | 123 | 0.458 | 0.677 | 1.136 |
| 1994 | 0.312 | 37 | 81 | 0.426 | 0.647 | 1.073 |
| 1995 | 0.294 | 33 | 104 | 0.431 | 0.577 | 1.009 |
| 1996 | 0.308 | 42 | 129 | 0.461 | 0.615 | 1.076 |
| 1997 | 0.291 | 40 | 101 | 0.446 | 0.585 | 1.031 |
| 1998 | 0.303 | 37 | 122 | 0.438 | 0.609 | 1.047 |
| 1999 | 0.262 | 34 | 83 | 0.389 | 0.617 | 1.006 |
| 2000 | 0.306 | 49 | 106 | 0.440 | 0.688 | 1.127 |
| 2001 | 0.328 | 73 | 137 | 0.515 | 0.863 | 1.379 |
| 2002 | 0.370 | 46 | 110 | 0.582 | 0.799 | 1.381 |
| 2003 | 0.341 | 45 | 90 | 0.529 | 0.749 | 1.278 |
| 2004 | 0.362 | 45 | 101 | 0.609 | 0.812 | 1.422 |
| 2005 | 0.286 | 5 | 10 | 0.404 | 0.667 | 1.071 |
| 2006 | 0.270 | 26 | 77 | 0.454 | 0.545 | 0.999 |
| 2007 | 0.276 | 28 | 66 | 0.480 | 0.565 | 1.045 |
| 通算 | 0.298 | 762 | 1,996 | 0.444 | 0.607 | 1.051 |
通算OPS1.051は歴代5位、OPS+182はリーグ平均の1.8倍です。打率は3割近くを維持し、40歳を超えてもOPS1.000を保った異常な持続力が特徴です。
ボンズは「満塁でも敬遠される打者」として有名であるため、その打撃能力の異常さがわかります。バリー・ボンズはホームランや打率、打点だけではなく、OPSやWARなどのセイバーメトリクスで見ても優秀すぎる選手であると評価できます。
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WARへの批判的な見方
WARは総合的な評価指標として広く利用されていますが、決して万能ではありません。fWARやrWARの算出方法には違いがあり、同じ選手でも数値が異なることから「どちらを信じるべきか」と疑問を持つ声も多い事実があります。ここでは以下の順でWARへの批判や限界を整理します。
- WARの限界
- 「WARは出場機会で増える」「見かけ倒しでは?」との批判
WARの限界
WARは便利な指標ですが、限界も明確で、まずfWARとrWARで守備評価の基準が異なるため、選手の数値が一致しません。
UZRを使うfWARと、DRSを用いるrWARでは同じプレーを評価しても結果が変わります。また、投手の評価方法にも違いがあり、FIPを採用するfWARと実際の失点を考慮するrWARでは数値に差が出ます。
さらに、WARは環境要因やチーム状況を完全に反映できません。球場の広さや守備陣のレベルが選手の数値に影響するため、単純に比較することには限界があると言えるでしょう。
「WARは出場機会で増える」「見かけ倒しでは?」との批判
WARは積算型の指標なので、出場機会が多いほど数値が増えやすい特徴があります。そのため「レギュラーで出続ける選手はWARが高くなるが、本当に実力差を反映しているのか」という批判もあります。
例えば、シーズンを通して安定して出場する選手は、突出した打撃成績がなくてもWARを積み上げることが可能です。そのため「見かけ倒し」と捉えられることがあります。
さらに、短期間で圧倒的な成績を残す選手よりも、平均的な活躍を続けた選手が高く評価されるケースもあります。
こうした点から、WARは選手評価の一助にはなるものの、万能な指標ではなく、OPSや防御率など他のデータと併用してこそ、正確な選手の評価につながると言えるでしょう。
こうしたWARの批判はセイバーメトリクスを導入した当時、最も盛んに起こりました。「データ重視の改革派か?」それとも「スカウトの目重視の従来派か?」セイバーメトリクス導入時の議論を詳細に描いたノンフィクション映画『マネーボール』はU-NEXT無料トライアルで視聴可能です。
ステロイド・薬物疑惑があるが、バリー・ボンズの成績は化け物【まとめ】
バリー・ボンズは、ステロイド疑惑という影を抱えながらも、MLB史上屈指の成績を残した伝説的スラッガーです。
通算WARは162.8(rWAR)・164.4(fWAR)でベーブ・ルースに次ぐ歴代2位、通算本塁打762本はメジャー最多。2001〜2004年の4年間では平均WAR11を記録し、まさに“神の領域”に達しました。
よく言われるのは「ステロイド・薬物がなくても活躍できた」という話です。あくまで疑惑であるため断言はしません。しかし、もしも「ステロイド・薬物を使っていなかったのなら」間違いなく殿堂入りをし、WARやOPSなどのセイバーメトリクスで見ても極めて優秀な選手と評価されていたでしょう。
WARなどの指標は、試合中に「今のプレーで数値がどう動いた?」と手元のデータと照らし合わせると観戦の深みが変わります。ただ、スマホでは画面が手狭です。
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