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メジャーリーグを語るうえで欠かせない指標のひとつが「WAR(Wins Above Replacement)」です。
WARは、ある選手が「控え選手と比べて何勝多くチームにもたらしたか」を数値化した総合評価で、打撃・守備・走塁すべてを含めて比較できる点が大きな特徴です。
皆様の中には、
- そもそもWARって何?
- トレバー・バウアーのWARを知りたい!
- トレバー・バウアーって正直どれくらい活躍してるの?
という疑問を抱えている方はいらっしゃるはず。
そこでこの記事では、WARの定義やfWARとrWARの違い、メリットと限界を整理したうえで、MLBでのトレバー・バウアーのシーズン別・通算成績を具体的に解説します。
またこの記事で紹介するWARといった「野球の評価基準」をもっと深く知りたい方にとって、データ野球の原点を描いたノンフィクション小説『マネーボール』は、まさに必読のバイブルです。「データ重視の改革派vsスカウトの目重視の従来派」の確執まで詳細に描かれており、野球の見方が根本から変わる一冊です。
WARとは何か?何を評価する指標か

WARは選手の総合的な貢献度を示す重要な評価指標です。ここでは以下の順に解説します。
- セイバーメトリクスとWARの関係性
- WAR(Wins Above Replacement)の定義と計算
- fWARとrWARの違い
- WARのメリット
セイバーメトリクスとWARの関係性
WARを正しく理解するには、まず「セイバーメトリクス」という言葉を知っておく必要があります。
セイバーメトリクスとは、野球を「勘や経験」ではなく「客観的なデータ(統計学)」で分析する手法のことです。
セイバーメトリクスによって「OPS」など様々な指標が生まれましたが、その中で「野手や投手を問わずに、選手の総合力をたった1つの数字で表そう」として作られた指標こそが、これから解説するWARです。
WAR(Wins Above Replacement)の定義
WARとは「Wins Above Replacement」の略称です。代替選手、つまり控えレベルの選手と比べてどれだけ勝利数を増やしたかを示します。
打撃、走塁、守備、投球などすべての要素を数値化し、統合して算出します。一般的に代替レベルのチームは勝率が約.320とされ、162試合で52勝程度しかできません。
基準と比較して、WARはその選手がどれだけ勝利に貢献したかを数値化します。そして打率や本塁打のように一側面だけではなく、総合的に選手の価値を評価できる点が特徴です。
fWARとrWARの違い
WARには主にfWARとrWARの二種類があります。
fWARは野手の守備をUZRで評価し、投手はFIPをベースに算出する方法です。fWARは守備の影響を取り除けるため、理論的に投手の純粋な力を測れる指標です。
一方、rWARはBaseball Referenceで用いられる算出方法です。守備はDRSを使用し、投手は実際の失点ベースで評価する点が異なります。rWARは実際の試合結果に基づいた評価で、現実に近い数字を出すと言えます。
WARのメリット
WARの最大のメリットは1つの数値で総合的な価値を比較できる点です。野手と投手を同じ基準で評価できるため、MVP投票や殿堂入り議論で活用されます。
また、WARは契約交渉や年俸評価でも重要な基準とされています。近年では「1WARは数百万ドルの価値」とも言われています。
ここまでWARの定義などの難しい話をしましたが「専門用語ばかりでイメージしにくい…」と感じた方もいるかもしれません。
実は、セイバーメトリクスを理解するのに、いきなり数式を覚える必要はありません。まずはデータ野球の原点で、メジャーリーグを舞台にしたノンフィクション作品『マネーボール』に触れてみるのがおすすめです。
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Audibleを30日間無料で試す ※無料体験中に解約すれば料金はかかりませんトレバー・バウアーの年度別・通算WARを紹介
次の動画はトレバー・バウアーのハイライトです。MLB時代に圧巻のパフォーマンスでサイ・ヤング賞に輝いた実力は本物です。
それではトレバー・バウアーの年度別・通算WARなど成績を以下の順で解説します。
- トレバー・バウアーの経歴
- トレバー・バウアーのシーズン別のfWARとrWAR
- 防御率・WHIP・奪三振率など通算成績
トレバー・バウアーの経歴
バウアー投手は2011年のドラフト全体3位でMLB入りを果たし、2020年にはレッズでサイ・ヤング賞に輝いた実力派右腕です。
2021年にはドジャースと3年総額1億200万ドルという破格の契約を結びましたが、私生活でのトラブルにより出場停止処分を受けました。その後、2023年に横浜DeNAへ推定年俸4億円で入団し、日本球界に衝撃を与えます。
2024年のメキシコリーグでの活躍を経て、2025年には球団史上最高額となる9億円規模の契約でDeNAに復帰しました。
期待されたシーズンでしたが、結果は4勝10敗に終わり、オフには自由契約となっています。圧倒的な才能を持ちながらも、グラウンド外での騒動がキャリアに影を落とすことも少なくありません。
元々スター選手であったバウアーですが、実はこうしたデータ野球は、スター選手を獲れない貧乏球団の苦肉の策から始まりました。
「現在の華やかなデータ野球は、どこから始まったのか?」 その熱い歴史を知りたい方は、ノンフィクション映画『マネーボール』を見てみてください。
トレバー・バウアーのシーズン別のfWARとrWAR
勝利への貢献度を示すWARを見ると、バウアー投手の全盛期がいかに凄まじかったかが数字から読み取れます。トレバー・バウアーのシーズン別のfWARとrWARは次の表にまとめました。
| シーズン | チーム | fWAR | rWAR |
|---|---|---|---|
| 2012 | ARI | -0.1 | -0.3 |
| 2013 | CLE | -0.3 | -0.2 |
| 2014 | CLE | 1.4 | 2.0 |
| 2015 | CLE | 1.8 | 1.6 |
| 2016 | CLE | 2.6 | 2.1 |
| 2017 | CLE | 2.8 | 2.9 |
| 2018 | CLE | 5.8 | 6.0 |
| 2019 | CLE / CIN | 3.2 | 1.4 |
| 2020 | CIN | 2.6 | 3.1 |
| 2021 | LAD | 1.8 | 3.2 |
※ fWARはFangraphs、rWARはBaseball-Reference(Pitching)に基づく
特に2018年はキャリアハイとなるfWAR5.8を記録し、サイ・ヤング賞を受賞した2020年も短縮シーズンながら2.6という高い数値を叩き出しました。MLB通算でのfWARは21.7に達しており、バウアーでチームに約22勝分の貯金をもたらした計算になります。
日本球界でもその能力を発揮。2023年には防御率2.76を記録してエース級の働きを見せました。しかし、34歳で迎えた2025年シーズンは防御率4.51と数字を落としています。守備に依存しない指標であるFIPは3.55とまずまずの数値でしたが、全盛期と比較すると数値の低下は否めません。
ここまで紹介したWARといった指標は、試合中に「今のプレーでどれくらいWARを稼いだのだろう?」と手元のデータと照らし合わせると観戦の深みが変わります。ただ、スマホでは画面が手狭です。
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トレバー・バウアーの防御率・WHIP・奪三振率など通算成績
トレバー・バウアーの防御率・WHIP・奪三振率など通算成績は以下の通りです。バウアー投手の投球スタイルにおける最大の特徴は、圧倒的な奪三振能力と長いイニングを投げ抜くタフネスにあります。
| 年 | チーム (リーグ) | 登板 | 勝-敗 | 防御率 | WHIP | 投球回 | 奪三振 | K/9 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2012 | ARI (MLB) | 4 | 1 – 2 | 6.06 | 1.65 | 16.1 | 17 | 9.37 |
| 2013 | CLE (MLB) | 4 | 1 – 2 | 5.29 | 1.82 | 17.0 | 11 | 5.82 |
| 2014 | CLE (MLB) | 26 | 5 – 8 | 4.18 | 1.38 | 153.0 | 143 | 8.41 |
| 2015 | CLE (MLB) | 31 | 11 – 12 | 4.55 | 1.31 | 176.0 | 170 | 8.69 |
| 2016 | CLE (MLB) | 35 | 12 – 8 | 4.26 | 1.31 | 190.0 | 168 | 7.96 |
| 2017 | CLE (MLB) | 32 | 17 – 9 | 4.19 | 1.37 | 176.1 | 196 | 10.00 |
| 2018 | CLE (MLB) | 28 | 12 – 6 | 2.21 | 1.09 | 175.1 | 221 | 11.34 |
| 2019 | CLE/CIN (MLB) | 34 | 11 – 13 | 4.48 | 1.25 | 213.0 | 253 | 10.69 |
| 2020 | CIN (MLB) ★ | 11 | 5 – 4 | 1.73 | 0.79 | 73.0 | 100 | 12.33 |
| 2021 | LAD (MLB) | 17 | 8 – 5 | 2.59 | 1.00 | 107.2 | 137 | 11.45 |
| 2023 | DeNA (NPB) | 19 | 10 – 4 | 2.76 | 1.15 | 130.2 | 130 | 8.95 |
| 2024 | メキシコシティ (LMB) | 14 | 10 – 0 | 2.48 | – | – | – | – |
| 2025 | DeNA (NPB) | 21 | 4 – 10 | 4.51 | 1.37 | 133.2 | 119 | 8.01 |
| 日米通算 (MLB+NPB) | 262 | 97 – 83 | 3.76 | 1.25 | 1562.0 | 1665 | 9.59 | |
※★はサイ・ヤング賞。LMB(メキシカンリーグ)は通算集計に含まず。
MLBとNPBを合わせた日米通算成績を見ると、防御率3.76、WHIP1.25という非常に安定した数値を残しました。特筆すべきは奪三振率であり、MLB通算で9.82、NPBでもイニング数を上回るハイペースで三振を量産しています。これまで積み上げた勝利数は97勝に達しましたが、高額年俸で再契約を果たした2025年は防御率4.51と精彩を欠きました。
その結果、期待されていた日米通算100勝のマイルストーンにはあと一歩届かず、悔しいシーズンとなっています。SNSでの発信や過去のトラブルで注目を集めがちですが、2020年に防御率1.73を記録した実力は本物です。
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WARへの批判的な見方
WARは総合的な評価指標として広く利用されていますが、決して万能ではありません。fWARやrWARの算出方法には違いがあり、同じ選手でも数値が異なることから「どちらを信じるべきか」と疑問を持つ声も多い事実があります。ここでは以下の順でWARへの批判や限界を整理します。
- WARの限界
- 「WARは出場機会で増える」「見かけ倒しでは?」との批判
WARの限界
WARは便利な指標ですが、限界も明確で、まずfWARとrWARで守備評価の基準が異なるため、選手の数値が一致しません。
UZRを使うfWARと、DRSを用いるrWARでは同じプレーを評価しても結果が変わります。また、投手の評価方法にも違いがあり、FIPを採用するfWARと実際の失点を考慮するrWARでは数値に差が出ます。
さらに、WARは環境要因やチーム状況を完全に反映できません。球場の広さや守備陣のレベルが選手の数値に影響するため、単純に比較することには限界があると言えるでしょう。
「WARは出場機会で増える」「見かけ倒しでは?」との批判
WARは積算型の指標なので、出場機会が多いほど数値が増えやすい特徴があります。そのため「レギュラーで出続ける選手はWARが高くなるが、本当に実力差を反映しているのか」という批判もあります。
例えば、シーズンを通して安定して出場する選手は、突出した打撃成績がなくてもWARを積み上げることが可能です。そのため「見かけ倒し」と捉えられることがあります。
さらに、短期間で圧倒的な成績を残す選手よりも、平均的な活躍を続けた選手が高く評価されるケースもあります。
こうした点から、WARは選手評価の一助にはなるものの、万能な指標ではなく、OPSや防御率など他のデータと併用してこそ、正確な選手の評価につながると言えるでしょう。
トレバー・バウアーの今後の動向に注目【まとめ】
MLB通算で積み上げたfWAR21.7という数字は、バウアーがスター選手であったことを示しています。一方で、2025年の防御率4.51という結果が示すように、データは選手の現状や衰えも残酷なまでに映し出します。それでも、日米通算97勝の実績やサイ・ヤング賞の輝きは色褪せません。
こうしたWARなどの指標は、試合中に「今のプレーで数値がどう動いた?」と手元のデータと照らし合わせると観戦の深みが変わります。ただ、スマホでは画面が手狭です。
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