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20世紀までは野球選手は打率・打点・本塁打で評価されてきましたが、現代では真の貢献度を数値化するセイバーメトリクスで選手を評価することが主流となっています。その中でも「OPS(出塁率+長打率)」は、得点との関係性が高い重要指標です。
皆様の中には、
- OPSって何?
- 鈴木誠也が記録したOPSってどれくらい?
- 鈴木誠也の日本とメジャーでのOPS+も知りたい!
という疑問や悩みを抱えている方はいらっしゃるはず。
そこでこの記事では、OPSの意味と計算方法、そして鈴木誠也のOPS・OPS+まで網羅して紹介します。
またこの記事で紹介するOPSといった「野球の評価基準」をもっと深く知りたい方にとって、データ野球の原点を描いたノンフィクション小説『マネーボール』は、まさに必読のバイブルです。「データ重視の改革派vsスカウトの目重視の従来派」の確執まで詳細に描かれており、野球の見方が根本から変わる一冊です。
OPSとは何か?何を評価する指標か

OPSは打者の得点への貢献度を示す評価指標です。ここでは以下の順に解説します。
- セイバーメトリクスとOPSの関係性
- WAR(Wins Above Replacement)の定義と計算
- fWARとrWARの違い
- WARのメリット
セイバーメトリクスとWARの関係性
OPSを正しく理解するには、まず「セイバーメトリクス」という言葉を知っておく必要があります。
セイバーメトリクスとは、野球を「勘や経験」ではなく「客観的なデータ(統計学)」で分析する手法のことです。
セイバーメトリクスによって「WAR」や「UZR」など様々な指標が生まれましたが、その中で「打者の総合的な得点貢献度を測る指標」こそが、これから解説するOPSです。
OPSとは?
OPSとは「On-base Plus Slugging(オンベース・プラス・スラッギング)」の略で、出塁率(OBP)と長打率(SLG)を足した値を指します。
出塁率は「アウトにならない確率」を表す指標であり、長打率は「どれだけ効率的に塁を進めたか」を表します。そのため、出塁率と長打率を合計すれば、打者の能力を総合して評価することが可能です。
2008年から2017年のNPBにおけるチーム得点とOPSとの相関は決定係数0.92とされ、OPSの高低だけで9割以上の得点差を説明できると言われます。
つまり、OPSが高いほど得点を生み出す打者ということです。
OPSの計算式
OPSは、出塁率(OBP)+長打率(SLG)で求められます。
まず出塁率は「(安打+四球+死球) ÷ (打数+四球+死球+犠飛)」という計算式で、打者がどれだけアウトを避けて塁に出たかを示します。一方、長打率は「塁打数 ÷ 打数」で、単打を1、二塁打を2、三塁打を3、本塁打を4として計算されます。
具体的な計算をすると、例えば出塁率が.380で長打率が.520の場合、出塁率.380+長打率.520=OPS.900になります。出塁率の最大値は1.000、長打率の最大値は4.000のため、理論上OPSの最大値は5.000です。
実際には1.000を超える選手はMVP級とされ、大谷翔平がアジア人で初めて1.000を超えました。MLBの歴代最高はバリー・ボンズが記録した1.422(2004年)です。
OPSの評価基準
セイバーメトリクスの創始者ビル・ジェームズは、OPSをAからGまでの7段階に分類しました。具体的には、Aランクが.900以上で「素晴らしい」、Bランクが.833〜.899で「非常に良い」、Cランクが.767〜.833で「良い」とされています。Dランク(.700〜.766)が「平均的」、Eランク(.633〜.699)は「平均以下」、Fランク(.567〜.633)は「悪い」、Gランク(.566以下)は「非常に悪い」と評価されます。
| ランク | 評価 | OPSの範囲 |
|---|---|---|
| A | 素晴らしい (MVP級) | .900以上 |
| B | 非常に良い | .833〜.899 |
| C | 良い | .767〜.833 |
| D | 並 | .700〜.766 |
| E | 平均以下 | .633〜.699 |
| F | 悪い | .567〜.633 |
| G | 非常に悪い | .566以下 |
実際のMLB全体平均OPSは、2023年シーズンで.734でした。OPSが.800を超える打者はチームの主軸級、.900を超えればMVP級といえます。
なお、OPSにはリーグや球場の環境差を考慮できないという弱点があるため、より公平な比較をするには後述のOPS+(平均を100とした補正値)を用います。
ここまでOPSの定義などの難しい話をしましたが「専門用語ばかりでイメージしにくい…」と感じた方もいるかもしれません。
実は、セイバーメトリクスを理解するのに、いきなり数式を覚える必要はありません。まずはデータ野球の原点で、メジャーリーグを舞台にしたノンフィクション作品『マネーボール』に触れてみるのがおすすめです。
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PS+(オーピーエス・プラス)は、OPSをさらに進化させた「補正付き打撃指標」です。通常のOPSは「.800」などが基準ですが、OPS+は「100を平均」として算出されるため、「平均より何%優れているか」が一目で分かるのが最大の特徴です。
単純な出塁率と長打率の和であるOPSに、リーグ平均と球場の環境差(パークファクター)を加味して、より公平に打者の実力を比較できるようにした指標になります。
計算式は「OPS+ = 100 ×(出塁率 ÷ リーグ出塁率 + 長打率 ÷ リーグ長打率 − 1)」で表され、リーグ平均を100とした指数で算出されます。
例えば、OPS+が150なら、平均的な打者よりも50%高い得点力を持つことを意味します。逆に80であれば、平均より20%低いという評価になります。
打者有利なヤンキースタジアムと広い球場であるオークランドの成績を同列に扱えないため、OPS+ではその環境差を補正してくれます。OPS+は、MLBではベーブ・ルースが通算206で史上最高、現役選手ではアーロン・ジャッジが約175、大谷翔平が160近くを毎年記録しています。
鈴木誠也の経歴やOPS、MLBでのOPS+など通算成績

ここでは鈴木誠也の日本とMLBでのOPSやOPS+についてBaseball-Referenceのデータを用いて以下の順に解説します。
- 鈴木誠也の日本とMLBでのOPS
- 鈴木誠也のMLBでのOPS+
鈴木誠也の日本とMLBでのOPS
鈴木誠也の日本とMLBの成績は以下の表にまとめました。鈴木誠也選手が本格的に覚醒したのは、やはり「神ってる」と称された2016年シーズンです。2016年は打率.335、29本塁打を記録し、自身初となるOPS 1.015を達成しました。
| 年度 | 球団 | 打率 | 本塁打 | 打点 | 出塁率 | OPS |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2013 | 広島 | .083 | 0 | 1 | .214 | .298 |
| 2014 | 広島 | .344 | 1 | 7 | .438 | .882 |
| 2015 | 広島 | .275 | 5 | 25 | .329 | .742 |
| 2016 | 広島 | .335 | 29 | 95 | .404 | 1.015 |
| 2017 | 広島 | .300 | 26 | 90 | .389 | .936 |
| 2018 | 広島 | .320 | 30 | 94 | .438 | 1.057 |
| 2019 | 広島 | .335 | 28 | 87 | .453 | 1.018 |
| 2020 | 広島 | .300 | 25 | 75 | .409 | .953 |
| 2021 | 広島 | .317 | 38 | 88 | .433 | 1.072 |
| NPB通算 (9年) | .315 | 182 | 562 | .414 | .985 | |
| 2022 | カブス | .262 | 14 | 46 | .336 | .770 |
| 2023 | カブス | .285 | 20 | 74 | .357 | .842 |
| 2024 | カブス | .283 | 21 | 73 | .366 | .848 |
| 2025 | カブス | .245 | 33 | 103 | .326 | .804 |
| MLB通算 (4年) | .269 | 88 | 296 | .346 | .818 | |
その後も安定感は揺るがず、2018年には30本塁打の大台に乗せています。翌2019年には打率.335で首位打者を獲得し、出塁率は驚異の.453をマークしました。2021年シーズンはキャリアハイとなる38本塁打を放ち、OPSは自己最高の1.072に達しました。
NPB通算で打率.315という確実性と長打力を兼ね備え、6年連続で打率3割を記録しています。出塁率も通算.414と極めて高く、出塁率と長打率の高さからNPB通算OPS.985という驚異的な数値につながりました。
MLBでも4年間で通算OPS.818の成績を残しているため、データで評価すれば「鈴木誠也はメジャーでも活躍中」と言えるでしょう。
ここまで紹介したOPSといった指標は、試合中に「今のプレーでどれくらいOPSを稼いだのだろう?」と手元のデータと照らし合わせると観戦の深みが変わります。ただ、スマホでは画面が手狭です。
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鈴木誠也のNPBとMLBでのOPS+
OPS+は、リーグ平均を100として打撃力を補正した指標です。球場の広さや時代の違いを考慮できるため、OPSよりも打者の価値をより正確に評価できます。日本での補正のためのパークファクターとBaseball-Referenceのデータを利用して、鈴木誠也のOPS+を以下の表にまとめました。
| 年度 | 球団 | 試合 | OPS | OPS+ | 評価 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2013 | 広島 | 11 | .298 | 24 | – |
| 2014 | 広島 | 36 | .882 | 134 | 一流 |
| 2015 | 広島 | 97 | .742 | 112 | 平均以上 |
| 2016 | 広島 | 129 | 1.015 | 177 | MVP級 |
| 2017 | 広島 | 115 | .936 | 156 | リーグ屈指 |
| 2018 | 広島 | 124 | 1.057 | 176 | MVP級 |
| 2019 | 広島 | 140 | 1.018 | 173 | MVP級 |
| 2020 | 広島 | 118 | .953 | 153 | リーグ屈指 |
| 2021 | 広島 | 132 | 1.072 | 192 | 歴史的 |
| 2022 | CHC | 111 | .770 | 113 | 平均以上 |
| 2023 | CHC | 138 | .842 | 130 | 一流 |
| 2024 | CHC | 132 | .848 | 138 | 一流 |
| 2025 | CHC | 151 | .804 | 130 | 一流 |
※NPB時代のOPS+は最新の得点PFにて補正算出
※基準:100=リーグ平均
OPS+は平均的な打者を100として評価します。そして鈴木誠也は2016年に177という数値を叩き出しました。つまり、リーグ平均の選手と比較して、得点創出能力が1.77倍も高いことを意味しています。
その後も数値は上昇を続け、NPB最終年の2021年には驚愕の192を記録しました。一般的な評価基準では、OPS+が140を超えれば一流、160以上でMVP級とされるため、鈴木誠也のNPBでの活躍ぶりがわかります。
舞台をメジャーに移しても、その打棒は健在で、2年目以降はOPS+130、138、130と3年連続で一流の基準をクリアしました。世界最高峰の環境でも平均より30%高い得点能力を維持し、中軸打者として活躍しています。
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鈴木誠也のOPSを知って、さらに野球を楽しもう【まとめ】
鈴木選手はNPB時代にOPS+192という歴史的数値を叩き出し、メジャー移籍後も3年連続でOPS+130超えを達成。日米通じて「平均より30%以上優れた一流打者」であることを、データが客観的に証明しています。
こうしたOPSやOPS+といった指標は、試合中に「今のプレーで数値がどう動いた?」と手元のデータと照らし合わせると観戦の深みが変わります。ただ、スマホでは画面が手狭です。
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でのOPSやメジャーリーグ(MLB)のOPSなどの通算成績-120x68.jpg)
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